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超薄膜スクラッチ試験機

本項では薄膜の密着強度を測定するマイクロスクラッチ試験法の測定原理を紹介いたします。

超薄膜スクラッチ試験機の測定原理

薄膜に対し印加された荷重とせん断応力の関係を模擬化したスクラッチ法の原理図

印加荷重と密着強度の関係(Benjamin & Weaverの計算式)

超薄膜スクラッチ試験機で採用しているマイクロスクラッチ試験法はスクラッチ試験法の測定原理をさらに高感度化し、ナノレベルの膜厚の膜に対応した試験方法です。従来のスクラッチ試験法では一定の曲率半径を持つ硬い(ダイヤモンド)圧子を薄膜表面に押付け(下記図)、荷重を増加させながら引っ掻き、薄膜のはく離が生じる荷重値(臨界荷重値)を計測します(Fig.1)。圧子を押し付けながらスクラッチした時に界面に作用するせん断応力(Fig.1のF)が密着強度を上回った時に界面はく離が生じます。圧子が試料に加える垂直方向の荷重をW・基材のブリネル硬度をH・圧子の曲率半径をRとすると、界面に働くせん断応力Fは下記 Benjamin & Weaver の計算式で表されます(Fig.2)。
                              Fig.1 スクラッチ先端の模式図                       



膜の密着強度と印加荷重の関係を示すスクラッチ試験法の原理式   
  
Fig.2 Benjammin & Weaver の関係式   

膜がはく離した時の荷重値は臨界荷重値とよばれ、上記の式においてWに臨界荷重値を用いたとき、界面の密着力に相当するせん断応力が計算されます。Benjamin&Weaverの関係式により、スクラッチ試験機において得られる臨界荷重値は界面の密着力と一対一で対応していることから、臨界荷重値が薄膜の密着性を評価する指標として用いられています。なお、臨界荷重値は圧子の径などの測定条件によって変化するため、スクラッチ試験機やマイクロスクラッチ試験機では、同一の測定条件にて複数の薄膜の臨界荷重値を比較する比較試験機として用いられます。

  

超薄膜スクラッチ試験機における薄膜のはく離を検出する機構

薄膜のはく離を検出するマイクロスクラッチ試験法のムービングコイル形状 従来のスクラッチ法を更に高感度化したのがマイクロスクラッチ試験法です。Fig.1に示すように、レコード針型のセンサに触針を取り付け、センサを水平方向に励振させながら垂直方向に荷重を印加します。この時、針先と膜の間に生じる摩擦力によって、磁石と近接した検出コイルの位置関係が変化することから、両者の相対的な速度変化をコイルに発生する電圧で検出します。膜の表面の変化は、針先の振動の変化として表れますが、マイクロスクラッチ試験機はこのような検出機構を用いるため、膜表面の変化を感度良く検出します。

 

    Fig.3 検出機構模式図

   

  薄膜のはく離を検出するマイクロスクラッチ試験法のムービングコイル形状

進化を遂げたCSR5000(従来機種との違い)

CSR5000型は弊社が長年扱ってきたマイクロスクラッチ試験法に更に改良を加えた手法を導入し製品化したものです。Fig.4(左図)に示すように、従来のマイクロスクラッチ試験法と同様に、針先の動きに連動した磁石の動きを近接したコイルで検出します。さらにFig.4(右図)に示すように、針先の垂直方向の振動を弊社独自の特許技術「特許5070146号」による加速度検出方式にて独立に検出することにより、膜の破壊検出感度が飛躍的に向上し、従来機種(CSR2000)と比較し感度アップを実現いたしました(Fig.5)。

  

Fig.4 最新検出機構模式図(左:水平方向 右:垂直方向)   


参考:膜厚数nmのHDD保護膜の測定結果

   HDD保護コート膜のスクラッチ測定結果2
Fig.5 HDD保護膜の測定結果(左:従来機CSR2000のデータ 右:CSR5000のデータ)

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